2013年3月6日水曜日

夜。女が帰ってきて病院に行くと言った。私が病院お泊りグッズを準備していると顔見に行くだけだからと直ぐ帰ってくると言うので、私は財布だけポッケットに突っ込み原付にまたがった。
病室に着くとお母さんと兄貴が帰り支度をする。荷物でも取りに帰るのかと思っていたが、女と明日の朝6時くらいには来ると言っている。
どうもついさっき気が変わったらしい。クソッタレめ。暇つぶしお泊りグッズは置いてきた。
親父さんに目をやる。驚愕。頬は更に痩けこて、こめかみの辺りも痩けて頭蓋骨の輪郭がはっきりしている。目と口は半開きで、半開きのまぶたから覗く白目は黄色く濁っている。鼻にはチューブを入れらていた。
私が呆気にとられていると、お母さんが親指よりデカイ綿棒に水を浸して、親父さんの口に突っ込むと親父さんは餓えた子犬みたいにしゃぶりついて水を飲んだ。生きているのではなく、生かされいるだけだ。
お母さんと兄貴が帰りしばらくすると、親父さんが目を開き私達に”再見、再見”と言った。その後私達に早く行け、早く行けと繰り返し、自分も立ち上がってどっかに行こうとした。勿論、自分の力で歩けないので何処にも行けなかったが。
モルヒネでラリった親父さんは朝まで自分が何をしたいかわからず、混乱していた。
小便をしたいといってズボンを脱いでも、直ぐにそれを忘れてズボンを履きそのまま便器に座り、その後また何をしていたか忘れてベッドに戻ったりと、朝までそんな事を繰り返していた。

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