2013年3月8日金曜日

回線業者がやって来てぶつ切り回線を直していった。昼には電気屋が来るはずだが、4時くらいまでこなかった。これが台湾だ。
来たら仕事はちゃんとヤッてくれて、やっとマトモにネットが出来る状態になった。
夜、再び病院に行く。その道すがら女が私にお母さんがもっと親父さんに話しかけるように言っていたので、今日は親父さんに話しかけるようにと言った。
私はモルヒネでラリっていて話しても無駄だと思っていたが、話しかけたほうがいいらしい。今更言うなという感じで私は少しかちんと来た。
病院につく。ここらへんは標高が高いので原付で来ると寒い。
病室に入るとベッドで知らないオッサンが眠っていた。アレっと思ったが、それは親父さんだった。顔が異常に浮腫んでいる。特にまぶたが腫れていて別人の顔になっていた。
お母さんが私達に水を飲ませる時は、スポイトを使えと言い残して帰っていった。もう何をする力も残っていなのだ。
私と女は親父さんをマッサージした。私はマッサージをしながらもう早く楽になって欲しいと思った。口には出せないが。
それから一時間ほどして看護師が体温と血圧を測りにやって来た。体温は異常なし、血圧は二度測ったが両方とも低いほうが66とか70とかだった。看護師は医者を呼びに行った。
五分もしないうちに医者の代わりにテレビでよく見る機械を押して戻ってきた。電気ショックをやる除細動器ってやつだ。遂にか、と私は思った。
看護師は一応ダイジョブだと思うけどこれを設置しますねと、親父さんのベッドの横に置き、それを親父さんにつないだ。除細動器からは親父さんの鼓動をモニターし始めた。正常に動いている。両方共。
私は女にお母さんに報告するように言った。女は心配させすぎるといけないから止めておくといった。女はよく嫌なことを見ないようにする。
私は絶対に電話しろと強く言った、事実は言うだけでいい、と。女は電話した。
私は大丈夫そうなので原付の移動とメールのチェックに行くと病室を後にした。今日も長い夜になるだろうと私はセブン-イレブンで牛肉面にソーセージをぶち込んでそれを腹にぶち込んだ。
PCを開いて直ぐに電話がなった。女だ。女が言った、もう直ぐ爸爸が死ぬと。
私はPCを手早く片付けて病室に戻った。
病室に入ると女と看護師が口を大きく開けて目は半開きの親父さんの服を脱がしていた。こっちの人間は死ぬ時は家で死なせる、女もさっきそう言っていたので帰る準備をしているのだと思った。
除細動器から聞こえる鼓動の音はさっきのペースの半分くらいだった。
女が私を見て爸爸が死んだと言った。
私は服を脱がすのを手伝った。女が除細動器のケーブルを親父さんから剥ぎ取ったら、看護師が飛んできてまだダメだとケーブルを付け直した。
女は何か事務手続きをしてくれと言われて病室から出て行った。私は荷物を片付け始めた。
しばらくすると兄貴とお母さんがやって来た。お母さんは親父さんの手を握って泣いていた。
気がつくとケーブルはすでに撤去されて親父さんは静かにベッドで死んだように眠っていた。
私はその姿を見て思った。アレもう死んでねぇ?
どうみも体は微動だにしていない。触ってみたが動いてない。ゴミを捨てに行ってるうちに死んでしまったのか?だが親父さんが死んだかどうか聞ける雰囲気ではない。でもついさっき看護師も話しかけてたのにな。
五分後くらいに私と女が荷物を車に詰み行くように言われたので、私は女にこれからどうするのか聞いた。家に戻るのか?と。
女は多分、葬儀場に連れて行くという。私は家には行かないのかと聞いた。もう間に合わないと女は言った。どうとも取れる返事だ。
私はハッキリと聞いた。親父さんはもう死んだの?と。
女は私が病室に帰ってくる前に死んだと言った。ほんの10秒くらいまえらしい。だが除細動器からは親父さんの鼓動をモニターするビープ音が鳴っていた。女にこのあともいろいろ聞いたが女も混乱していたので親父さんがどこのタイミングで死んだのかはよくわからなかった。細かい話なので私はもう気にしないことにした。
荷物を車に放り込んで病室に戻ると病室は空。看護師の話ではどうも遺体安置所にいったらしい。
安置所には仏教の祭壇があり、三蔵法師みたいな仏像が祭ってあった。その前に親父さんの遺体は黄色い布にくるまれ安置してあった。
安置所には一フレーズだけを永遠に繰り返すお経みたいなのが流れていた。
お母さんは手を合わせてそのフレーズを繰り返していた。女は爸爸はナントカナントカの仏教だからアミトフと唱えてと私に言って、お母さんと一緒に手を合わせてそのフレーズを繰り返し始めた。私もそれに習った。
私は親父さんが包まれた黄色い布を見ながら、まったく悲しくなかった。義理の親子といっても付き合いは浅かった。知り合ったのは4,5年前だが会う機会は殆ど無く、一緒に暮らしたのも一ヶ月足らず。腹を割って話したこともなかった。顔見知りのオッサンが死んだくらいの感じだ。
そんな事を考えていると次々と親戚が入ってきて、念仏を唱えだした。
私は思った、まさかこれ朝まで続くの?

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